映像にやさしい温度を宿す|videographer・久保田 菜々恵が贈るLUT『Nostalgic Memory Light』
CURBON LUT LETTERS|久保田 菜々恵
CURBONのLUTから広がる、アーティストたちの“動画と言葉”に触れる新シリーズ「CURBON LUT LETTERS」。
LUTは、ただのフィルターではありません。
それは、シャッターの先にある“まなざし”や“心の色”を分け合う、ひとつの手紙のようなもの。
どんな瞬間にレンズを向けたのか。どんな色に心が動いたのか。
そんな感覚を誰かと共有できるのが、LUTの魅力です。
このシリーズでは、写真や動画への想い、創作のルーツ、日常のひらめきを丁寧にひもといていきます。
第5回は、優しく日本らしい映像を発信し続けるvideographer・久保田 菜々恵さん。
彼女が見つめる世界を、そっと覗いてみませんか?
はじめに
こんにちは。動画クリエイターの久保田 菜々恵です。
約4年前から観光系のリール動画に魅了され、気がつけば日々カメラを手にしています。
今は京都と奈良を中心に、神社仏閣や祭、自然の景色を撮影し、その魅力をInstagramで届けています。
ただ「映像を撮る」のではなく、その土地が持つ空気や文化を映し出し、見てくださる方に少しでも心に残る瞬間を届けたい。そんな想いで活動を続けています。

そんな私の作る映像に必要不可欠なオリジナルLUTが、
『Nostalgic Memory Light』と言う名でCURBONさんより販売させていただくことになりました。
『Nostalgic Memory Light』という色
私が作った色「Nostalgic Memory Light」は、青と緑をベースに、淡いピンクやオレンジを加えた優しい色合いです。
映像制作の世界では、多くの作品が男性クリエイターによるもので、色味もシネマティックで青や緑が中心です。そんな中で、女性クリエイターとして「男性とは違う優しさ」と「日本らしさ」を表現できる色を追求しました。
ピンクとオレンジを加えることで、昭和レトロを思わせる懐かしさを漂わせ、日本らしい伝統の雰囲気を映し出す。さらに、自然の景色をよりリアルに、そして柔らかく表現できるのです。
その答えが――『Nostalgic Memory』。
映像にやさしい温度を宿す、新しい色の物語です。
いつもの景色をemotionalにー
「なんだか懐かしい気持ちになる色」
「自分もこの色を真似してみたい!」
そんな声をいただくことが増えたのをきっかけに、このLUTを作ることを決めました。
伝統ある風景や自然の景色に、ほんの少し優しい色を添えることで、新しい美しさを表現できる。そんな思いから誕生したのが、このLUTです。
映像を通して、多くの方にそのやわらかな世界観を楽しんでもらえたら嬉しいです。
どの時間でも使えてしまう、最強LUT
このLUTはどの光の状態でも美しくお使いいただけます。
特に晴れの日にその効果を発揮しますが、Lightにピンク系を入れているため、森の中では緑や青のほかにほんの少しの薄いピンクが現れます。

また、夕日の時にはそのピンク色とオレンジ色がより際立ち鮮やかな夕暮れを演出します。

また、田舎のエモい景色がそのピンクとオレンジが入ることによってレトロ感あるノスタルジックな暖かく懐かしい風景へと変身を遂げます。

雨の日ではコントラストをしっかりつけていただくとしっかりした色がのり、雨の冷たさが伝わるようなしっとりとした
寒色を表現していただけます。

私がこのLUTを使う上で特に一番好きなシーンは夏のエモさを表現できる海と船と入道雲のセットです。このワンシーンだけで、夏のエモさをこのLUTが見事に表現してくれるのでこの日の思い出が懐かしい記憶へと変わる思い入れの強いシーンだからです。

蘇る記憶を色にのせて
どんなに美しい景色や伝統も、時とともに人々の記憶から薄れていってしまう。
それが、私にはとても切なく、耐えがたいことでした。
だからこそ、映像を通してその瞬間を残したい。
ただ記録するだけではなく、“懐かしさ”という温度をまとわせて、心の奥に届くような色で。
『Nostalgic Memory Light』は、そんな想いから生まれたLUTです。
時間や天気を問わず景色をやわらかく映し出し、使う人それぞれがその時に感じた空気や感情を表現できるように調整しました。
映像の中で蘇るあの日の記憶。
それが誰かの心にそっと残り、懐かしい温度となって寄り添っていけたなら――
この色を作った意味があると、私は思っています。
あなただけの色を紡ぐために
「このLUTを使えば、あの綺麗な色になる」
そう思っていただけることは、とても嬉しいことです。
けれど、LUTは決して一つの答えではありません。
撮影者の設定や調整によって、色はどんどん姿を変えていきます。ホワイトバランスや露出、NDフィルターの濃さ、カメラの特性──それぞれが重なって、映し出される色は一人ひとり違うのです。
私自身は少し冷たい青みを帯びた4000Kで撮影することが多いですが、5000K、6000Kと上げていくと、色は柔らかく、温かく変わっていきます。同じLUTを使っていても、決して同じ「色」にはならないのです。
だからこそ思うのです。
「みんな違って、みんな良い」──それがカラーグレーディングの醍醐味だと。
ホワイトバランスを少し動かすだけで、新しい表情に出会える。
コントラストを調整するだけで、懐かしい温度が宿る。
そうやって少しずつ変化を重ねるうちに、きっとあなただけの「記憶に残る色」が見つかるはずです。

最後に
私のLUTは、見える世界をノスタルジックに、そして美しく表現してくれます。
けれど、カメラの設定をおろそかにしては、その魅力は十分に引き出せません。
私自身、常に学び続ける姿勢を大切にしています。だからこそ、今も学ぶことばかり。
実際にLUTを当てたあとも、コントラストや露出、彩度を必ず微調整しています。
その小さな調整の積み重ねが、映像をさらに美しくしてくれるのです。
LUTは、あなたが見た「記憶」を着飾るファッションのようなもの。
その日の気分によって服を選ぶように、LUTも自由に使いこなしてほしいと思います。
撮影した映像を「懐かしい記憶」として残すために。
ぜひ、あなた自身の手でこのLUTを育て、特別な色にしていってください。
